恋人たちのトロデーン城 1





恋人たちのトロデーン城




ミーティアの様子が変だ。
急に部屋に入ると、びくっとして何かを隠す。夜中に僕の隣からこっそり起き出してどこかへ行き、しばらくすると満足した顔で戻ってくる。
あまり気になるのでこの前夜中にこっそり後をつけてみたんだけど、途中の扉で鍵を掛けられてしまった。
近くに前の同僚がいたので聞いてみたんだけど、
「見てない聞いてない見てない聞いてない…」
…絶対何か隠している。
メイドさんにも探りを入れてみたんだけど、
「エイト様、それはお気のせいですわ。本当にお二方の仲がよろしくて羨ましい限りでございます。ホホホ」
…かわされた。
この人はミーティアに仕えて十年以上になる。篤い忠誠をミーティアに捧げていて、僕がちょっと探りを入れたところで主の秘密を話してはくれないだろう。
これはアレなんだろうか、いわゆる、う、浮気とかいうもの?でも早過ぎなんじゃないだろうか?僕たち結婚してまだ二ヶ月も経ってないのに。
いつも一緒にいて仲良くしているし、僕はミーティア一筋だぞ。昨夜だってあんなに…
…あれ、おかしいな。ミーティアが何か隠しているっていうこと以外はいつもと何も変わらないんだよね。朝起きるととっても嬉しそうに「おはよう」って言ってキスしてくれるし、僕の武術の稽古の時は冷たい物を用意して見守っていてくれる。
ミーティアのダンスの稽古に付き合わされるのも、渋面作っているけど本当はすごく嬉しい。
トロデーン国を治めていくために必要なことを学ぶ講議を一緒に受けたり、一緒に本を読んだり、後でそういったことについて意見を交換したり、毎日とても新鮮だ。いちゃついているだけじゃなくてちゃんと有意義な日々を送っている。
もしかしてあれかな?最近ミーティアの困り顔がすごくかわいいということに気が付いて、あれこれ知恵を絞って困らせているんだけど、ちょっとやり過ぎた?
まてよ、困らせ始めた最初の頃は何もなかったな。新年を迎えた頃もだ。
ミーティアはククールに「エイトが意地悪するので困る」なんて伝言していたぐらいだ。
あっ、その後だ。ゼシカが城に遊びにきて、「女同士で話があるから」って言われて閉め出された時からだ。お茶持っていくふりして話を聞こうとしたんだけど、
「悪いけど女同士の話だからエイトは遠慮してね」
「ごめんなさい、エイト。後で話しますわ」
と追い出されてしまった。
そう言えばその時の話の内容聞いてない。あれ、何だったのかな。後で聞いたんだけど、
「女同士ですもの、男の方には知られたくない話もありますわ。ふふふ」
とはぐらかされたんだった。
あの時もっと聞いておけばよかった。思えば隠し事はその後からなんだし。
でもしつこく問いつめたらきっとすごく嫌がったかも。いつもミーティアを困らせているけど、本当に困らせるのは嫌なんだ。あの美しい碧の瞳を涙で曇らせるなんてとても僕にはできない。
それにしてもミーティアは一体何を隠しているんだろう?ももももし本当に浮気だったらどうしよう。


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2005.1.21〜26 初出 2007.2.3 改定









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