『白鳥の姫と金獅子の騎士』
(後編)
すえた臭いのする薄暗い場所で、王子は意識を取り戻しました。床にただ転がされていたせいか、身体の節々が痛みます。それでも落馬前に受けた胸の矢傷には薬草が貼られ、傷口は塞がりつつありました。
「ここは…」
それでも大分出血したせいか身体を動かすのもおそろしく億劫です。首だけをゆっくり動かして辺りの様子を窺うと、どこかの船底の荷物置き場のようでした。ゆらゆら揺れているように思えたのは波に揺られているせいなのでしょう。
戻らなければ、と王子は思いました。あのような怪しげなことになって自分が攫われ、白鳥姫だけが賊の前に残されていると思うといても立ってもいられません。それに意識を完全に失う前に聞こえた声です。王子はその声に聞き覚えがありました。
もしその声の持ち主が推測する人物であるとするならば、と王子は必死で考えました。射掛けられたのは分かります。白鳥の姫君に対しても玉座にたいしても自分が邪魔になるからです。王子の下には妹君しかおりません。王位継承の順位は王子が一位で、王子の父君の弟(この方はもう鬼籍に入られておりました)を父とする彼の従弟君が二位なのです。では何故おざなりではあっても傷の手当がされているのでしょう。
(私になり代わろうとしている…?)
実は従弟君は王族の常として既に結婚しています。本来ならば白鳥姫と結婚することはできません。ですがここで王子になりすませば姫と結婚できると考えたのでしょう。そして王子は従弟として東の国の王女を攫おうとした罪で処刑してしまえば、もう邪魔者はいません。
でもどうしてそれができましょう。国に帰れば父も母も兄弟たちもいるのです。従弟君の妃も王子になりすましている者が何者かすぐに見破るでしょう。
(待て…もしや狙いは姫だけではなく、玉座自体もか…)
王子をよく見知るもの全てを全員殺すなり幽閉するなりしてしまうつもりなのです。そうして玉座に就くつもりなのでしょう。
王子は歯噛みしました。ほんの一瞬の隙を突かれて不覚を取り、自分はともかく白鳥の姫君や両親、妹たちにまで危険に曝してしまったことを深く悔やみました。ですが悔やんでばかりもいられません。もし自分の推測通りなら姫は恐らく脅されて王子になりすました従弟と結婚させられてしまうでしょう。
と、その時部屋の外を歩く靴音がしました。それも複数です。王子はとっさに意識を失ったままのふりをしました。
「のんきに寝てやがる。どうなるかも知らねえでいい気なもんだぜ」
ギーと嫌な音を立てて扉が開き、二人分の重い靴音が部屋に入ってきました。
「まあ、いいんじゃねえの。それにどうなるか知ったらきっと喜ぶと思うぜ」
耳障りな音で男たちは笑いあうと、どちらかの足が王子を突きました。
「金髪の色男さんよ。俺たちの雇い主は親切だぜ。何しろきゅっと締めて海にドボンなんて乱暴な真似はしねえ」
「おい、何とか言ったらどうだ」
と今度は激しく蹴り転がされました。が、王子は意識を失ったふりを続けています。
「ちっ、起きやしねえ」
忌々しげに男は吐き捨てると、ぺっと唾を吐きかけました。
「起きていたらたっぷりいたぶってやったのによ。気を失ってんじゃ面白くねえ」
「仕事はたくさんあるんだ、戻るぜ」
「人遣い荒過ぎだぜ、あの野郎」
「ま、悪くても金貨か、うまくいけば爵位で貴族様だ。後は楽しく暮らせるぜ」
「それもそうだな。ゴミ溜めで生まれた俺様が貴族だとよ。うひゃひゃ、こいつは笑えるぜ」
下卑た笑いを残して男たちは部屋を出て行きました。しかし、扉の鍵音がしなかったことを王子はしっかり確認しておりました。
一方、城では西の国の王子─本当はその従弟─を迎えておりました。それらしく見える綺羅綺羅しい衣装を身に着け、お仕着せを着せたたくさんの家来を従えて白鳥姫を連れた従弟君は確かにそれらしく見えたものです。
「姫君はならず者に襲われておいででした」
謁見の間に通されて開口一番、従弟は姫の父王に向かってそう言いました。
「あわや連れ去られようとする瞬間、姫君の卑しき下僕なる私めが賊どもを切り伏せ、お助け申し上げたのでございます」
得意気に言い放つ男に王様は無言で横の重臣たちに目を遣りました。その視線を受け、貴族の一人が問いかけました。
「姫の護衛がついていた筈だが、その者は?」
「おお、申し遅れました」
男はますますうれしそうな顔になりました。
「そのならず者こそ、護衛についていた男だったのです。恥ずかしながら申し上げます、実はその男、我が従弟でございました。しばらく我が宮廷から見かけぬと思ったら、分不相応な望みを抱いて姫君に求婚し、撥ねつけられて逆上したものと思われます」
「何と」
居並ぶ貴族たちの間にざわめきが走りました。そのざわめきに押し被せるかのように従弟君は続けます。
「その者、捕らえてこちらに連れております。どうぞご検分を」
その声に従って、家来たちの間から覆いのかかった籠が押し出されます。乱暴に床に置かれると、重い音がして中からがんじがらめに縛られた男が転がり出てきました。
「愚か者よ。裁きを受けるがよ─」
従弟はそう言いかけて一瞬詰まりました。その横で王や貴族たちには見えないようにしっかりと捕えられていた白鳥姫が息を飲みました。殴られたのか誰とも分からないくらい顔の腫れたこの者は、確かに王子と同じ金髪ではあるけれど似ても似つかぬ別人だったのです。危うく叫びそうになりましたが、ぐっと堪え、父王に向かってさり気なく視線を送ります。と、父王も何か気付いたのか姫に向かって微かに頷きました。
「裁きを受けるがよいわ!」
それでも気を取り直して従弟は言い切ります。鞘に収まったままの剣の平で一発、縛られた男の顔を殴りつけました。
「貴様の所業、我が父にこと細かに報告させてもらおう。三族皆処分し、爵位も領地も召し上げてくれるわ!」
「ほう。確かに我が父に申し上げれば、まこと、三族皆殺しであろうな」
突然降って湧いたようにどこからともなく声が聞こえました。新たな声の主を探そうと廷臣たちがうろうろする中、白鳥の姫君だけが気付いておりました。先程から捕らえている手が緩んでいることに。
「どこだ!出て来い!意気地なしめ!」
剣を抜くと、従弟は叫びました。が、その声にどこか怯えが混じります。
「意気地なしはどちらだ。そなたがここまで愚かで卑怯者であったとは思いもよらなかったぞ」
謁見の間の側廊、塔へと続いている出入り口から一人の男が姿を現しました。この塔は謁見の間以外には通じておらず、かなり高いところにしか窓がなかったために警備されていなかったのです。
「貴様は!」
男に向かって従弟君が一歩足を踏み出した時です。
「王子様!」
気を取られてできた隙を姫君は見逃しませんでした。一気に手を振り切り、王子の元へと走り出します。また、姫にとって幸運なことに、捕まえようとした者たちが掴んだのはドレスのかなりひらひらとしたレースの部分でした。飾りが盛大な音を立てて裂けただけで、姫は王子の胸に飛び込みました。
「よくぞご無事で」
「姫…」
王子はほんの少しの間だけ愛しい姫君を抱き締めましたが、すぐ従弟君に向き直りました。
「そなたの企みは破れたぞ!我が国の王位を簒奪せんとし、あまつさえいとも気高き東の国の王女殿下に狼藉を働かんとしたこと、許しがたい!そなたこそ裁きを受けよ!」
「うるさい、黙れ!」
従弟君はじりじりと迫ってくる王子を睨みつけておりましたが、形勢不利と見るや周りの者どもを蹴散らして逃げ出していきました。それを追いかけて家来たち─前金半分で雇われたごろつきどもでした─が褒美を取り逃すまいと追いかけます。さらにそれを兵たちが追いかけ、謁見の間はたちまちがらんとなりました。
「東の国の国王陛下、改めて申し上げます」
ひとまず室内の喧騒が止んだのを見て、王子が国王の前に進み出、片膝をつきました。姫君はそれにぴたりと寄り添います。
「故有って名乗ってはおりませんでしたが、私こそ海を越え遥か西の国の一の王子。─ここにその証たるものが」
王子はズボンの裾を捲り上げました。と、その下から燦然ときらめく頚章が現れたのです。
「我が国で第一王位継承者のみに与えられる勲章にございます。本来ならば頚に巻くところ、目立たぬようこちらに巻いておりますが」
「うむ」
王の言葉に我に返ったのか、まだ残っていた貴族の中でも外交に明るい者が進み出て王子の勲章を確認します。
「確かに。王陛下」
貴族の言葉に頷くと、王は王子に視線を遣りました。
「国王陛下、我が国の者がいとも尊き宮殿を斯様に汚したことを深くお詫び申し上げます。我が国の者が犯した罪は、私が犯したも同然。如何様にでも処断くださいますよう。父も、我が骸とあの者の骸を見れば、何が為されようとしていたのか理解することでしょう」
「まこと、その覚悟であろうな」
「はっ」
「お父様!」
王と王子の言葉に白鳥姫が王子の前に躍り出ます。
「どうか、それだけはお許しくださいませ」
「姫は黙っておいで」
王は優しくも有無を言わせぬ口調で姫を押し止め、王子に声をかけました。
「よかろう。その覚悟、しかと見届けた。
ならば命ずる。ただちに賊の首領を捕らえ、我が前に引き立てよ」
「はっ!仰せのままに」
王子は深々と一礼すると踵を返し、従弟の捜索に出たのでした。
さて、件の従弟です。彼は一人で城内を逃げておりました。付き従っていた、というよりは褒美を貰い逃すものかと必死にくっついていたごろつきどもは誰もおりません。追手が迫る度にごろつきどもを盾にして、逃げ延びてきていたのです。
さてどうしたものか、と従弟君は考えました。城門の跳ね橋が上げられたのをさっき見たのです。このままでは外に逃げることはできません。王子と違って彼の武芸の腕はからっきしでしたし、勇気はさらにありませんでした。兵士を切り伏せて跳ね橋を下ろし、逃げるなんて芸当はできっこありません。かといって捕まる気もさらさらありませんでしたので、取りあえず城のどこかにこっそり隠れて機会を窺うことにしました。
と、廊下の曲がった先から重い靴音が聞こえてきました。がちゃがちゃという音は武器がベルトの金具に当たる音でしょう。これはいけない、と従弟はとっさに手近な扉の中に飛び込みました。
音もなく扉を閉め、外の様子を窺うとこちらには気付かずどうやら行き過ぎていったようです。やれやれ一安心だと胸を撫で下ろしました。
それにしてもこの部屋は何なのかと暗がりに眼を凝らしました。生々しい、獣の臭いがします。部屋の隅にはたくさんの毛皮が重ねられておりました。それも銀狐やテンのような高級な毛皮ではなく、食用の豚や牛をつぶした後に取った皮でした。こういったものも武具や馬具など非常に使い道が広いので残さず使うのです。
従弟は落胆しました。どうせなら武器庫ならばよかったのに、と思ったのです。
「ふん…」
つまらなさ気に手にした皮を戻そうとした時、妙案が浮かびました。この皮を被って家畜が迷い込んだふりをすればいいのではないか、と。特にこの手近にある皮、とりわけ大きな豚だったのか人を覆うこともできそうです。
(この高貴な身を覆うには豚、ということは気になるが─)
まずは隠れることが先決、と従弟は着ていた服を脱いで毛皮の下に隠し、豚の皮を被りました。
従弟捜索のため城内を隈なく歩き回っていた王子ですが、扉の向こうから不審な物音がするのに気付きました。何やら大きな動物が部屋の中を暴れまわっているようです。家畜小屋ならいざ知らず、このような大きな城でそんな音がするのはおかしいと王子は確認することにしました。
剣を抜き、扉ににじり寄ります。中の気配を窺い、気配が扉から離れた瞬間に部屋に踊り込みました。
「ぶひーっ」
豚、にしては大きい生き物が入り口目掛けて突進してきました。とっさに剣の平で殴りつけようとするとやけに素早く身をかわし、部屋の隅に下がります。が、再び襲い掛かってきました。王子はそれをかわし、体勢を崩したところで首投げして壁に叩きつけ、目を回している隙に手早くベルトを外して足を縛り上げました。
「これは…」
そこへ物音を聞きつけた城の兵士たちが駆けつけてきます。
「すまないが、手伝ってもらえないだろうか」
王子兵士の持っていた鉄の槍を借りて豚を括りつけると、部屋を見回しました。皮の間から従弟が着ていた服と靴が覗いています。部屋が暗かったせいでちゃんと隠したつもりでも、灯りの下でははっきりと見えてしまったのです。
「王陛下に奏上願いたい。あの者と思しき者を捕らえた、と」
「はっ!」
一人の兵士が急いで王子の言葉を王に伝えに走っていきました。残った兵士の中の一人が恐る恐る豚を覗き込みました。
「これ、どうやって運ぶんですか」
兵士の言葉ももっともです。
「ぶひ、ぶひ、ぶひいいいいいいい!」
四肢を縛られ、棒に括りつけられてもなお、豚は暴れています。
「このまま運ぶしかあるまい」
王子はうんざりしたように言いました。豚はなおも騒ぎ続けております。
再び謁見の間に王子が現れ、部屋の中にざわめきが生まれました。思ったより早かったことと、何やら怪しげな生き物が足元に置かれ、凄まじい音量で騒ぎ立てていることに。そのような騒ぎにも動じず、王子は王の前に進み出ました。
「これは」
さすがの王も呆気に取られたようです。
「恐れながら申し上げます」
騒ぎに負けないよう王子は声を張り上げました。
「皮置き場でこの豚と共にこれを見つけました。先程まであの者が着用していた服と靴にございます」
部屋の中で見つけた証拠の品に王は眼を剥きました。
「何と、この豚があの者だと申すのか!」
「ぶひ、ぶひ、ぶひひひひひひーん!」
王の言葉に豚は必死で頚を横に振ります。それはまるで「違う」と言っているようでした。どう見ても怪しい様子に王と王子は顔を見合わせました。
「陛下に申し上げます。この豚、私が尋問させていただいてもいいでしょうか」
妙な沈黙の後、王子が申し出ました。王が軽く頷くと、王子は豚に向き直りました。
「ではおぬしは豚なのだな」
「……ぶひ」
豚は王子の問いに渋々と言った様子で頚を縦に振ります。
「そうか。ではやはり豚なのだな。確かによい豚のようだ」
さもありなん、と王子は重々しく頷きました。
「…ぶひ?」
「では早速屠殺してハムとベーコンにしよう」
「ぶひいいいいいいいん!」
豚は必死で逃げようとしましたが、ベルトががっちり締まっているので動くことすらできません。
「おお、豚の分際で嫌なのか」
「ぶひ、ぶひ、ぶひ」
まるでうんうんと頷いているようです。居並ぶ家臣たちの間から失笑が洩れました。
「では人なのだな」
「…ぶひ」
仕方なさそうに豚は頷きました。さすがにハムやベーコンになる運命は嫌だったようです。
「おぬしは私の従弟だな」
「…」
一気に核心に切り込んだ王子の問いに、豚はそっぽを向きました。
「そうか、やはり豚か。ではハムだな」
「ぶひーっ!…ぶひ、ぶひー!」
慌てて首を縦に振り、豚は王子の従弟であることを明かしてしまいました。
後から分かったことなのですが、あの皮の持ち主だった豚は魔物の血を引いていたようなのです(そのため一般の豚よりずっと大きく成長したのです)。城の魔術師たちが色々考えた結果、その皮には一種の呪いがかかっていて、生身の身体に皮をまとったためにその皮が張り付き、本物の豚になってしまったのではないか、という結論になったのでした。
さて、後から分かった事情はさておき、王子はこの一件について尋問し、豚が従弟であること、王子に成りすまして姫と結婚し、西の国の玉座を狙ったことを明らかにしました。
「どうかお裁きを」
全てを詳らかにし、王子は王の前に首を垂れました。
「…まあ、このような姿でもあるし」
ちら、と王が眼を遣ると豚は大きな身体をできる限りすぼませて小さくなっています。
「中身が元ヒトであるのなら、ハムにするというのもどうも寝覚めが悪い。豚小屋に案内するがよい。
これ、豚よ、我が国の豚小屋は大層掃除が行き届いておりますぞ」
途端に豚はぶすっとした顔をしましたが、当然豚の顔をしておりましたので家臣たちも笑うばかりでした。
しかるべき場所に豚が連れて行かれた後、王が口を開きました。
「さて、そなただが」
王子は王の前に控えております。こちらに敬意を表しつつも気品も威厳も失わない様子に、王は改めて感心しました。
「まさかあの豚の始末をつけるためだけにこの国に来たのではあるまい」
王子はぐっと腹に力を入れ、答えました。ここが正念場です。
「私は貴国の姫君、白鳥姫に結婚を申し込みに参りました。姫君の麗質を耳にするにつけ、お顔を拝したいと海を越え、貴国に参ったのでございます」
しんと静まり返った謁見の間に王子の声だけが響き渡ります。
「しかしながら、我が国といとも尊き貴国には諍いがありました。ただ姫君に婚姻を申し込むは余りに無礼極まると思い、この身命を以って償わんとお仕え申し上げた次第でございます。
過去において不幸な流血がありましたこと、父王に代わり深くお詫び申し上げます。そしてどうか、姫君との婚姻をお許しください」
深々と頭を下げる王子を厳しい顔で見ていた王でしたが、不意に喜色満面の笑みを浮かべました。
「よかろう。過去のことは水に流し、西の国の王子と我が姫の婚姻を認めよう。
これ、大司教を呼べ。直ちに婚礼のしたくじゃ!」
それから七日七晩に及ぶ婚礼の宴が行われ、二人の結婚が祝福されたのでした。
婚礼の宴も果て、いよいよ王子の住む西の国への旅立ちの日が来ました。
「時折はこちらにも顔を見せてくれよ」
王の父親としての言葉に姫は深く頷きました。
「もちろんですわ」
「半年に一度は訪問いたします」
王子がそう言うと、
「いやいや、姫が息災であると知れればよいのじゃ。それにそのように里帰りしていてはよき妻、よき母、よき妃として務めが果たせまいぞ」
と王は答え、愛しい我が子を見遣りました。
「…ありがとうございます、お父様」
「一生懸けて姫をお守りし、幸せにいたします」
王子様はそう誓って美しい花嫁を西の国に連れて帰り、そこでもまた七夜に及ぶ大宴会で二人の婚礼を祝ったのでした。
そして金獅子の騎士だった王子様と白鳥の姫君はいつまでも幸せに暮らしました。仲の悪かった二つの国は、これを機会に仲良くなって世界は平和になったのでした。
その後東の国では長く、「芸をする豚」というものが王宮の宴会の度に余興として引き出されたということです。その豚はまるで人の言葉が分かるかのように振舞う上に、時々不貞腐れた態度をとるところも妙におかしく、どんな時でも、宴の場はあっという間に笑いの坩堝と化したのだとか。
めでたし、めでたし。
(おしまい)
2008.8.8 初出
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