ミーティア姫のわがまま





「姫様がわがままだったって、信じられないな」
ある日の泉でこんな会話になった。以前ミーティア姫は、
『小さい時はミーティアもわがままだったし…』
と言っていたんだが、オレにはあの馬鹿王子のわがままとは違ってんじゃないかと思えて仕方ない。
そう思って聞いてみた。すると、
「本当にわがままだったんです」
と恥ずかしげに話し始めた。

            ※          ※          ※

エイトとお友達になって一緒にお外で遊んでいる時、エイトからプレゼントをもらったの。エイトは葦の茎にお花をいっぱいつけた簪(かんざし)を作って、髪を結わえて挿してくれたのよ。
とっても嬉しくてお城に帰ってお夕食の時もしていて、
「エイトにもらったの」
ってお父様にも自慢したの。
そうして寝る時になって、メイドさんに外されそうになったの。
「御髪(おぐし)をお梳きいたしますので」
って。
「どうして外すの?エイトにもらったミーティアの大切な物なのに。絶対嫌!」
って駄々をこねて、お父様に、
「姫のために働いている人々に迷惑をかけてはいかん」
って怒られてしまったの。

            ※          ※          ※

「…本当にわがままだったと思うわ。
あっ、あとお祖母様が亡くなられた時に『死んじゃいや!』って言ったのもわがままよね…」
段々姫様の身体が光に包まれてくる。
「あの時の花の簪、朝起きたら花が萎れたからって捨てられてまた大泣きしてしまったのよ。
あっ、もう時間切れね。いつもありがとう、エイト」
そう言いながら馬の姿へと戻ってしまった。


…どこがわがままなんだ?
そして結局のろけかよ。エイトもそっぽ向きつつ顔赤くして嬉しそうだし。
最近のオレの役回りってこればっかだな。はあ。


                                    (終)




2005.12.21 初出









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