秘密会議




「何て言うかドラマよねー。まさに『王冠を賭けた恋』だわ」
竜神族の里でエイトの出生の秘密を聞いた後、ゼシカがうっとりと呟いた。
「しかしトーポがあんなじじいだったとはね。…ってエイト、どうした?」
ククールの横でエイトがものすごく凹んでいる。
「いきなりあんなにたくさんの秘密を聞かされたら誰だってショックでがすよ。
兄貴、大丈夫でがすか」
ヤンガスの気遣いにエイトが呻く。
「…姫様が…」
「馬姫様がどうしたでげす?」
「時々トーポを抱き上げて『トーポかわいい』ってキスしてたんだ」
「「「えええええええええーっ」」」
「中身が僕の祖父だったなんてもうどうしたらいいか…」
がっくりうなだれるエイト。三人が事態を何とか収拾しようとする。
「ほっ、ほら事故ってあるじゃない?人工呼吸はキスのうちに入らないとか。外側はかわいいネズミなんだし」
「いやでも中身はグルーノさんだぞ。姫様のファーストキスはじじいかよ。そりゃショックだわな」
「兄貴、黙っていればいいんでがすよ。アッシらも協力するでがす」
「そうよ、私たちも絶対言わないわよ」
仲間たちの懸命のフォローに対し、エイトがぼそりと呟く。
「違う…」
「ん?何が違うんだ?」
ククールの問いにエイトがうつむきながら答える。
「姫様とはキスしたことあるんだ」
「「「えええええええええーっ」」」
今日二回目の「えー」の大合唱。
「そっ、それは意外だわ…」
「兄貴も隅におけないでげすねー」
「奥手だと思っていたのに意外と手の早いヤツだな。で、いつしたんだよ」
興味津々の三人に若干引き気味になりながらもエイトは答える。
「九つの時…将来結婚しようっていう約束で」
唖然とエイトの告白を聞いていた三人のうち、ククールがぷっと吹き出した。
「なんだよそりゃ。期待して損したよ。城の物陰とかで熱いのをかましていたのかと思っていたらガキの頃の話かよ。ガキの頃のキスなんてそれこそ犬とするようなもんだぜ」
手ひどいククールの言葉に対してエイトはさらに深く凹む。
「あら、そうかしら?私はロマンチックでいいと思うけど。あんたみたいなスレたヤツには分からないかも知れないけど、こういうのって女の子はいくつになっても好きなものよ」
「アッシはパルミドみたいなスレた街で育ったんで兄貴みたいな純愛が羨ましいでがす」
「はあ、ありがとう。…でも、トーポの中身がアレなことは変わりないんだよね」
ヤンガスとゼシカの言葉に感謝しつつもため息混じりにエイトは答えた。
「まあ、あれだ。この件についてはトロデ王と姫様には黙っておこうぜ。レディーに無駄なショックを与えるのはオレも本意じゃない」
「そうよね、ククールもたまにはいいこというじゃない。世の中知らずにいた方がいいこともたくさんあるってことで」
「アッシも口が裂けても言わないでがす。兄貴のためなら死ぬまで秘密を守るでげすよ」
「みんな、どうもありがとう。そうしてもらえると助かるよ」
仲間うちで今後の方針が定まったその時、ククールが禁断の一言を呟いてしまった。
「それにしてもあのじじい羨ましいな。あの美しい姫様に抱かれてキスされていたなんて」
「それを言うなーっ!」
エイトの叫びとともに怒りのギガデインがククールの脳天を直撃した。

                          (終)




2005.3.2 初出








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